小三治師匠から言われた「教えられた通りにやればいいというわけじゃない」という言葉
10月7日は昨年亡くなった三三の師匠、小三治の命日であった。どんな師匠だったのだろうか。
「弟子たちに自分からアプローチすることはなかったですね。自分の姿を見て学べ、という考えでした。僕が前座時代に言われたのは、まず『大きな声でやれ』。次に、『落語に聞こえないから、落語らしくやれ』。二つ目になって、『落語らしくは聞こえるけど、物語を語るだけじゃなくて、登場人物の気持ちを語れ』というくらいですか。賞を頂いた時も、あえて報告しませんでした。師匠は『賞を取ったからといって、噺がうまくなるわけじゃない』という考えでしたから。『賞とか名跡といった肩書は芸と関係ないんだ』とも言ってました」
ひたすら芸を探求した孤高の名人、小三治らしい考え方である。
「晩年、師匠の独演会のお供をするようになって、ある時ポツリと言われた、『教えられた通りにやればいいというわけじゃない』という言葉が印象に残ってます」
三三は以前から教えられた通りに古典を演じるだけでなく、新作落語も演じるようになっていた。きっかけは2009年、新作派の三遊亭白鳥と始めた「白鳥・三三 両極端の会」である。