ピン芸人 松原タニシさん「母親の味といえば“卵がらみ”。朝は必ずスクランブルエッグ」
正月はチーズケーキみたいな「錦卵」を
僕が卵料理が好きだからか、おふくろメシとして浮かぶのは卵がらみなんです。お正月には「錦卵」といって羊羮みたいな形のおせち料理をよく作ってくれました。
こちらはまずゆで卵を作り、黄身と白身を分けたら、しゃもじを使ってザルで裏ごし。味付けは塩と砂糖だけ。塩は小さじ、砂糖は大さじと分量は違いますね。かなり甘いですから。片栗粉も少々。
縦長の流し缶に上部が黄色、下が白の2層にして平らに敷き詰め、蒸し器で数分蒸し、冷ましたら食べやすい大きさにカット。一見、洋菓子のような仕上がり。切り方によりチーズケーキみたいにも見える色鮮やかなメニューです。
結構大変そうですが、母親は行事メシに力を入れるタイプでしたね。
お盆は、ここ数年はコロナ禍で集まれませんでしたが、子供の頃から神戸の実家に親戚が集まりました。僕が10歳の時におばあちゃんが亡くなってからは、家に祖母の仏壇があるので、法要では大勢来ていて。
母親は必ずといっていいほどちらし寿司を作ってくれましたね。錦糸卵がふんだんにちりばめられて、こちらの卵もおいしい!
お盆といえば、母親は踊りの先生をやっていたので、地蔵がある近所の駐車場での地蔵盆、いわゆる盆踊りでは中心になって踊ってました。その前に僕らのご飯を用意して、踊って、家に戻って親戚の相手をしたりと忙しかった。
■父親はお坊さん
実は父親がお坊さんなんですよ。インドのお坊さんたちを供養するのがお盆の由来という話も聞きました。あくまで父親の宗派の話ではあるのでしょうが。
お盆の時季は食べ物にまつわる意味を考えるいい機会かもしれませんね。
最近、お寺での断食道場に参加し、5泊したんです。食事の前にお坊さんが「食べるということは殺すということです」とお話しされて。
「スーパーで売ってる、みなさんが食材と呼んでいるものも、別に食材として生まれたわけではなくて、食べられるために畑で育ってるわけじゃないですから。生きてるものをね、殺してるわけだから。その実感を持たなきゃいかんなと」
改めて食べ物について考えさせられました。今度の新刊にはこんな体験や、卵にからんだ恐いエピソードなどタイトル通り「恐い食べ物」の話がいろいろ載っています。
ちなみに母親は、僕が実家に帰ると今でも朝ごはんにスクランブルエッグを作ってくれます。今のところ恐い話は何もないので、ずっと作り続けてほしいです(笑)。
(聞き手=松野大介)
▽本名=松原高志(まつばら・たかし) 1982年4月28日、兵庫県出身。2003年から芸人活動。番組企画をきっかけに「事故物件住みます芸人」として活動。「事故物件怪談 恐い間取り」シリーズなど著書がヒット。新刊「恐い食べ物」(二見書房、1650円)が早くも好評。