映画で理解するパレスチナ問題(中編)報復劇のむなしさを暴いたスピルバーグ監督作「ミュンヘン」
■極秘交渉の舞台裏を描いた「OSLO オスロ」
果てしない対立と絶望的なテロの連鎖は93年、ノルウェー政府の仲介による「オスロ合意」の成立によって希望を見いだす。歴史上初めてイスラエルとPLOが相互に承認し合い、占領地域からイスラエルが暫定的に撤退するという画期的な合意が結ばれたのだ。その極秘交渉の舞台裏を、バートレット・シャー監督「OSLO オスロ」(21年)は仲介役ノルウェー人夫妻を主人公に描く。オスロ合意に署名したペレス外相とラビン首相、アラファト議長は94年にノーベル平和賞を受賞した。しかし、和平に反対する極右イスラエル人青年によってラビン首相が95年に暗殺され、オスロ合意はあえなく崩壊する。その後、今に至るまでオスロ合意に代わるような和平枠組みは存在していない。 =つづく
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▽北島純(きたじま・じゅん) 映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。