勉強を欠かさなかった先輩医師は"霊水"を信じたのだろうか
以前のことになりますが、某大学医学部のS教授の友人が膵臓がんの末期状態で入院されました。S教授は私に会いに来られびっくりするような相談をされたのです。
「このまま抗がん剤が効かなくなって、命が短いのは分かっている。ヒ素を飲ませてくれないか?先生さえよければ持参する。責任は私が取る。私は効くと思っている。どうだ?」
S教授は動物実験でそのような研究をされているようでした。
私は、「動物では効くかもしれませんが、医薬品になっていないものを、個人的に臨床で試してみるのは無理です」と、きっぱり断りました。S教授がどのようなつもりで「責任を取る」と話されたかは分かりません。 その後、ヒ素は「三酸化ヒ素」として医薬品が開発され、急性前骨髄球性白血病に効果を認め、いまは市販されています。
変わって、私の先輩であるN先生のお話です。この先輩は化学が得意で、がん細胞の化学的観点からの研究をされていました。普段はニコニコされていますが、怒ると怖い方でした。