勉強を欠かさなかった先輩医師は"霊水"を信じたのだろうか
引退してからは、月に1回くらい病院の図書室を訪れ、文献を探して勉強されているようでした。その際、勉強を終えて帰られる前に私の部屋に立ち寄ることもありました。私が不在にしていると、文献のコピーを置いていかれます。多くは最新の英文で書かれた論文でした。
部屋に私がいるときは、ニコニコしながら「これを読んでみてください」と入って来られます。ある時は「肝臓がんの発生について面白く書いてあります」と、ある時は「がんはこんなことまで分かってきました」と……。私は「年老いられても勉強が好きなんだ。すごいな」と、いつもそう思っていました。
ある日のことです。いつものように私の部屋を訪れたN先生が「これを見てください。この水、私は効果があると思うのだがどうだろう」と言いながら、パンフレットを差し出されました。
それを目にして私は訝りました。「○○霊水」と書かれているのです。私はなんとも答えに困りました。
「そのパンフレットは置いていくから、読んでおいてください」