高額療養費見直しで「月額3万3300円」の負担増 収入減に治療費かさみ…子育て中のがん患者から悲鳴
負担上限引き上げなら《死にます》の悲痛
収入に恵まれていればまだしも、回答者の年収は7割が「650万円未満」、うち5割が「510万円未満」。人によってはここから150万円も収入が減り、100万円が治療費に消え、かつ子育て費用も捻出しなければならない。がんや難病がどれほど家計を圧迫することか。
しかし、政府がやろうとしているのは支援拡充どころか追い打ち。今年8月から年収区分に応じて段階的に負担上限を引き上げ、最終的に2027年8月以降には、年収510万~650万円なら月の上限額は現行の8万100円から11万3400円に達する。実に3万3300円もの負担増だ。年収260万~370万円でも月額2万1600円増が待ち受ける。
当然、子どもへの影響も避け難い。アンケートには、負担上限引き上げによって「進路を変更する」(49%)や「塾や習い事を減らす」(63%)など、望まぬ選択肢を余儀なくされるとの声が相次いだ。自由記述の回答は特に悲痛だ。
《引き上げになり何か支出を減らす必要があれば、真っ先に自分の治療費を減らすと思います。子どもたちが私の治療のせいで進路を変更するなんてあり得ません。なら死にます》(乳がん50代女性、子ども2人)
中学生、高校生の息子2人を育てる肺腺がん患者の水戸部ゆうこさんは、会見で「(引き上げは)病気を抱えながら、子育てする親にとって過酷」とマイクを握り、こう訴えた。
「生きるのを諦めろ、子どもの明るい未来はない、と言われているようで、絶望しており、弱いものいじめをされているように感じます」
こうした当事者の声を聞くことすらせず、社会保障審議会のたった4回の議論だけで負担上限引き上げを決定した政府の罪は重い。7日午前、福岡資麿厚労大臣は閣議後の会見で、来週半ばにもがん患者の団体から直接話を聞く機会を設けたいと話したが、まずは白紙撤回が筋だ。
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一方で今国会は、年金制度改革が焦点のひとつ。就職氷河期世代には死活問題だ。関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。