加速する初任給引き上げ「大卒30万円」の懸念材料…“格差拡大”で中堅社員の士気低下も
政府の「賃上げ」要請に呼応するように日本経団連に加盟する大企業を中心に、初任給引き上げが加速している。業界を問わず、「企業は人なり」と優秀な人材確保のため、大卒で月30万円台に乗せる企業も相次いでいる。
ファーストリテイリングは2025年3月の給与改定で新卒社員の初任給を33万円にする。明治安田生命保険は25年4月入社で33.2万円(全国転勤あり、固定残業代込み)と2年連続で引き上げた。三井物産や伊藤忠商事など大手商社は軒並み30万円を超えている。
東京海上日動火災保険が26年4月、転勤と転居を伴う場合の大卒で最大約41万円とし、三井住友銀行も同入行の初任給を30万円にする。
26年には新入社員と2~3年社員の給与はほぼ横並びとなり、一段と実績重視の厳しい出世競争に直面する。
また、その初任給アップの原資は、年功序列の崩壊で管理職の給与圧縮でもあろう。
■中小企業は21万円台
民間シンクタンク・産労総合研究所の調査によると、24年4月入社の大卒社員の初任給は、従業員数1000人以上の大企業で24万1082円、同299人以下の中小企業では21万8118円。30万円台が相次ぐ東証上場の大企業の水準には到底及ばない。人件費などコストの増加分を価格に反映した割合を示す「価格転嫁率」は49.7%と賃上げ原資に悩む中小企業は多い。