奈良県立図書情報館(奈良市)全国でも珍しく公文書館機能を併せ持つ
「千鳥鳴く 佐保の川瀬のさざれ波……」と万葉集にも詠まれた、桜並木が美しい佐保川のほとりに立つ、奈良県立図書情報館。旧施設の老朽化に伴い現在地に移転、建築され2005年に開館した、敷地面積約3万平方メートルと奈良県一の広さを誇る公立図書館だ。興味深いのは「図書館」ではなく「図書情報館」という名称。
「当館は単なる図書館ではなく公文書館の機能を併せ持つ、全国でも数少ない図書館なんです。奈良県の情報拠点としての機能を持つ施設として設立されましたから、『奈良県の歴史を伝える公文書』、4万点以上の古文書や絵図などの史資料も所蔵しています」と図書・公文書課の西川慶子さんが言う。
ユニークなのは公文書館機能が図書館機能とともに縦横に情報へのアクセスが可能であること。「法隆寺修繕一件」(明治27年)など所蔵する公文書は約2万2000点(うち約7000冊は県の指定文化財)あり、デジタル化が済んでいる約1400冊は館のデジタルアーカイブ「まほろばデジタルライブラリー」で古文書や絵図など約6200点の史資料とともに公開しており、PCやスマートフォンなどのインターネット端末で見ることができるのだ。
外観は法隆寺の特徴的な裳階と呼ばれる庇のような屋根と、ガラス張りの近代的な建物で、館内は3階建て。佐保川に面したメインエントランス(2階)は吹き抜けで明るく広々としており、入り口を進むと奥には芸術・美術、海外の雑誌などがゆったりと並ぶほか、視聴覚資料、PC利用席も。3階は文献資料を中心としたフロアで、専門資料スペースと一般図書スペースとの2つに分かれている。