遂に日本初の公道レースが実現!「フォーミュラE東京」はなぜ開催できたのか?
モナコGPとは規模感が違うが…
「やっぱり政治の力だよね。都知事や地方自治体の首長クラスが本気で動けば禁断の公道レースができるってことですよ」(モータースポーツ記者)。
先週末の晴れた土曜日、突如自動車レースの「フォーミュラE」が東京お台場にて開催された。正式名は「2024年フォーミュラE第5戦東京E-Prix」だが、要は2014年から世界の大都市で始まった1人乗りオープンホイール電気自動車によるEVレースである。告知は1年ほど前からなされているが、知らない人も多く、当日現場で観客に尋ねると「1カ月前に都の告知で」とか「昨日知りました(笑)」という人も少なからずいた。
最大のキモは、日本初の公道を使ったフォーミュラカーレースであること。コースは東京を代表するお台場の国際展示場、東京ビッグサイト周辺の1周2.5km強の道で、具体的にはりんかい線東雲駅から展示場に来る道と東棟と会議棟の間を通る道がメイン。ただ、現場で見てみると、半分ぐらいは東棟駐車場の通路を使っており、ほぼ完全に公道を封鎖して行われる世界3大レースの1つである欧州の「モナコグランプリ」やアジアの「シンガポールグランプリ」とは規模感が違う。特にモナコに匹敵する公道レースとなると、日本では皇居を1周するぐらいの演出が必要だろう。
公道レース実現を阻んでいた「壁」とは
とはいえ、発表によれば観客動員数は約2万人。土曜日決勝単独の数であり、スタンド収容人数などは公開されてないので測りがたいが、まずは成功とみていい。事実、決勝は晴れた暖かい土曜日。ふらり現場に訪れる人は数多く、チケットがないと走るマシンを直接見れないが、F1ほどの高周波ビッグサウンドはなくとも、♪ヒューンという刺激的EVサウンドは生で聞けるし、スピードは凄まじい。
なにしろ最高出力470馬力で1トンを切るマシンが、時速300kmを超えて走るのだ……いや、東京ではコースの都合上、最高速は時速270km程度に抑えられていたが、それでも超速い。
加えてビッグサイト東館では、大画面でレースが観れる無料のパブリックビューイングが設置されており、誰でも楽しめる。
何より日本の自動車関係者にとって、一般道を使った公道レースは悲願。自分が自動車マスコミ界に入った90年代のF1ブームの頃から「日本で公道レースを開催したい」「なぜできないのか?」は論議になるほどで、結論としては警察の壁が大きかった。ひと言でいうならば「モータースポーツは危ない」「やめよう」「無理」となるのだ。
フォーミュラE開催の検討を始めたのは5年前
果たしてこの壁をどう突破したのか。今回フォーミュラE東京開催に向け、大きなバックアップをした「E-Tokyo Festival 2024」を主催した都の産業労働局 産業・エネルギー政策部の毛塚健太課長を直撃してみた。
「やはり環境問題でありEVの普及ですね。いま東京都は環境にかなり力を入れていて、2050年ゼロエミッションとか2030年カーボンハーフを目的とした時、どういうPRが都民に対してできるのか。(フォーミュラEを)検討し始めたのが5年前くらいで、警視庁さんや関係の部署とやりとりを重ねてある程度コースが絞れたのが3年前くらい。実際に開催が決まったのは昨年。都としては異例に時間をかけていると思います」
――小池百合子都知事の存在は大きい?
「小池さんが都知事になってから急速に。元環境大臣であり、環境に対しても求める水準が非常に高く、知事ご自身も『21世紀は都市の時代』だとおっしゃってるので。都市の方から環境に対するPRを拡散していこうと常々公言されてますし」
――やはりフォーミュラEが電気自動車だからこそ公道レースだと?
「そこの大義がなければ、ここまでコストをかけての長期の取り組みはやれなかったと思います」
つくづく日本初の公道レースはEVあればこそ。同時に力ある政治家が本気でやる気になれば、ヤリたいことはできるということなのである。