どんな人が乗るの?スーパーカー真夏の夜の夢!フェラーリ初SUVプロサングエに乗って考えた
フェラーリ プロサングエ(車両価格:¥47,600,000/税込み)
暑い! 生命の限界を感じるほど猛烈に暑い!! てなわけで、いま最も熱いスーパースポーツ、フェラーリ プロサングエ(4760万円!)に乗って熱い葛藤をお届けしよう。
……それは「コレはSUVなのか? フェラーリなのか?」という永遠のクルマ好き命題だ。
プロサングエは22年に京都で日本発表、最近本格デリバリーが始まった新作フェラーリで、筆者も先日試乗がやっと許された。
いまだかつてない独特存在感だ。骨格は専用のアルミプラットフォームで、エンジンは名作エンツォ・フェラーリに由来する6.5ℓV12DOHC。最高出力725ps、最大トルク716Nmと恐ろしくパワフルで、それをフロントミッドに起きつつ、8段ATをリアに置いたトランスアクスルレイアウトの4WD車。
前後重量配分は49対51と理想的だ。その結果、時速0-100km加速は3.3秒と文句なしで、まさにフェラーリの名に恥じないパフォーマンス。
公式には「フェラーリ初の4ドア4シーター」だが
だがポイントは、その縦横高さ比で全長5m弱×全幅2m強のデカさはもちろん、全高約1.6mと完全にSUVサイズに仕上がっていること。今までで「最も背の高いフェラーリ」と言っていい。
しかし同社はプロサングエを「フェラーリ初の4ドア4シーター」としか言わない。なぜなら世界で最もエクスクルーシブなスポーツカーブランドであるフェラーリは長年、「SUVを作らない」と言い続けてきたからだ。
なぜなら、プレミアムカーの世界では2002年にポルシェがカイエンを大ヒットさせてからすっかりSUVが主流。メルセデスにBMW、アウディにレクサスはもちろん、2016年にはベントレーがベンテイガ、2018年にはロールスロイスがカリナン、ランボルギーニがウルス、2019年にはアストンマーティンがDBXをリリースし、ハイブランドもSUV抜きでは語れなくなってきた。
そこで満を持して出てきたのが新型プロサングエであり、これをすんなりSUVと認めていいのか? 否か? というのが我々の悩みなのだ。
「SUVであると同時にリアルフェラーリでもある」が正解
ここで結論を言ってしまうと、プロサングエは誰から見てもSUVである。ロングノーズの流麗デザインは完全にフェラーリだが、高い全高、観音開きの4ドア、広いリアシートと共に473ℓの大きめトランクがもたらす利便性はSUVというほかはない。
しかし前述した725psのV12気筒エンジンの甲高く劇場感に満ちたサウンド、力強さに流麗スタイル、ステアリングフィールは、まごう事なきフェラーリ。デカいはデカいが、いわゆる背高SUVにありがちな鈍さやかったるさは一切ない。新型プロサングエは「SUVであると同時にリアルフェラーリでもある」というのが正解なのだ。
最大のキモは、プロサングエに導入されたフェラーリ初のアクティブサスペンション。これは最新レーシングカーも手掛けるカナダのマルチマチック社と共同開発したもので、前後左右に備えたアクチュエーターが瞬時にサスペンションの長さや減衰特性を変え、SUVにありがちな鈍さを取り去ってしまう。
実際乗ってみると不思議な感覚だ。ノーズはフロントエンジンフェラーリらしく長い一方、視界はSUV的に高め。
しかし走り出した途端、背の高さを感じさせない。全長5mの大柄ボディの傾きやステアリングフィールの曖昧さがなく、ビシッとシャープにハンドリングが決まる。視点こそ高いが乗った感じはリアルスーパースポーツなのだ。
今まで乗ってた普段履きプレミアムSUVの代わり
それでいて硬派なフェラーリらしからぬほどエンタメ性能も充実しており、前席は10.2インチのダブルディスプレーで車両設定は自由自在。空調も完璧で、高級セダンさながらの4ゾーンエアコンはもちろん、4座独立したシートヒーターにシートベンチレーションまで完備。硬派なスポーツカーマニア向けというより快適装備を満載した、いまどきのお金持ち用超プレミアムSUVである。
聞けばフェラーリオーナーのほとんどがクルマを複数所有しており、フェラーリとベントレーとか、フェラーリとロールスロイスとか時に高級ミニバンとか、「趣味でフェラーリ」に乗り「普段は実用的なSUVやセダン、ミニバン」という人が多い。そういう人にとってプロサングエは既存フェラーリの代わりではなく、今まで乗ってた普段履きプレミアムSUVの代わりなのである。
タマの祝祭日は背の低いフェラーリで、土日も家族と背の高いフェラーリに乗りたい! という贅沢な需要があるのだ。お金持ちの欲望とは、かくも終わりのないものなのである。