備蓄米21t放出“真の狙い”は自民党の大票田「JA」救済…夏の参院選を意識した一時しのぎの姑息
あまりにも遅きに失した決断であり、効果も未知数だ。農水省が政府備蓄米の2割強に相当する21万トンを放出することになった。コメ価格の高騰にようやく重い腰を上げたようにみえるが、視線の先に消費者はいない。備蓄米放出の狙いはズバリ、夏の参院選対策だ。
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これまで備蓄米放出は大凶作などに限り、コメ流通の目詰まりを理由としたのは初めて。入札に参加できるのは大手集荷業者のみ。年間の玄米仕入れ量が5000トン以上、卸への販売計画・契約があることなど条件のハードルは高く、主に全国農業協同組合連合会(JA全農)が買い手となる。
店頭からコメが消えた昨夏の「令和のコメ騒動」の時でさえ放出を渋ったのに、方針を大きく転換させたのはなぜか。背景にあるのはJA全農の苦境だ。コメを十分に確保できず、悲鳴を上げていたのだ。理由は争奪戦の激化である。
かつてはJA系の組織がコメの生産量全体の半数近くを買い取っていたが、近年は農協を通さず、小売業者や個人に直販するコメ農家も増えている。流通の多様化に加え、昨夏からの米価の高騰以来、多くの業者が産地調達に走った。JA全農も2024年産の買い上げ価格(概算金)を4~5割ほど引き上げたが、アップ分は追加で支払う仕組みだ。
「コメ農家にすれば追加払いの見込みがあっても、すぐ高値で買ってくれる業者に売ってしまいがち。価格競争に敗れたJAは、昨年末から出荷先に契約数量が確保できないとの異例の通知を出すなど、窮地に立たされていました」(農政関係者)