高校野球「1週間500球」の嘘…抜け落ちた故障防止の観点
「まったく機能していませんよ」
と、スポーツライターの美山和也氏が指摘するのは、今センバツから導入されている「1週間500球」の球数制限のことだ。
球児を酷使、故障から守るために設けられたルールだが、例えば29日の仙台育英(宮城)戦で8回164球を投げ準決勝に駒を進めた天理(奈良)の達孝太(3年)の球数は3試合で459球に達している。「1週間500球」の制限には抵触しないものの、20日の初戦から中4日、中3日で3連投。2戦目までは完投しており、明らかに投げすぎだ。その影響か、この日は8四死球を与えるなど、中村監督が「こんな達を見たことがない」と言うほど状態が悪かった。
さらに過酷な状況にあるのは中京大中京(愛知)の畔柳亨丞(3年)だ。25日の初戦から3試合すべてに中1日で登板し2完投。準決勝の明豊(大分)戦も中1日での先発が濃厚だ。こちらは「500球ルール」に引っ掛かりそうだが、それでもなお、準決勝では121球も投げられるため、事実上の投げ放題である。
「選手の将来を考えれば、彼らの球数には疑問を覚えます。球数の話で思い起こされるのは、2013年センバツで9日の間に772球を投げた安楽智大(24=楽天)です。それでも当時の済美の故・上甲監督は『今は無理をさせていい時期だ』という考え方でした。他にも私が現場で取材する指導者は『投げさせるべき』という意見が多くを占めているのです」(美山氏)