松澤知加子プロ<3>ファッショナブルな女子プロの“先駆者”
松澤知加子プロ
20代の松澤知加子プロ(53)がタイムスリップして、今の女子プロゴルフ界にデビューしたとしても、またたく間に実力兼備の人気アイドル選手になるはずだ。それだけ当時からファッショナブルだった。
今のゴルフウエアはそのまま街中に出ても違和感のないカジュアル志向が主流だ。すでに松澤が四半世紀前からお気に入りのファッションスタイルだ。人気ブランド「パーリーゲイツ」との契約が男子プロは芹沢信雄、女子プロが松澤だったのも納得がいく。
ゴルフシューズでも先駆者だった。かつては革靴風の硬くて重いゴルフシューズが定番だったが、1990年代にナイキ社がスポーツタイプの軽量ゴルフシューズを発表すると、すぐに自ら新シューズを考案した。
「私も(他メーカーの)バスケットボールシューズの底に、はめ込み式のスパイクびょうを取り付けてもらって試合に出ました」
女子プロ界の“おしゃれ番長”のこだわりはクラブにも注がれた。
師匠であり、プラスハンディの父親・松澤清之さんは自らクラブ作りを手がけるクラフトマンだ。そこで大手メーカーのクラブではなく、父が作るオーダーメードクラブで戦った。そのアイアンヘッドの裏側には2種類の宝石が埋め込まれていた。
「ブラッドストーンと水晶です。2つの宝石を一緒に付けると『勝利』という意味になるから父に頼んで作ってもらいました。ほかにもピンク色のシャフトを使用したのはバッバ・ワトソンより私の方が先だったんですよ(笑い)」
2人の息子は20歳と15歳になった。
「子育てというより、私が子供に育ててもらい、大人にしてもらったんです。以前は一人で電車に乗れなかった私ですが、子供たちのおかげでPTAの卒業式準備会にも入れてもらえたし、一般社会人の勉強ができました。昔と今と自分が変わった点ですね」
今春、サイト「知加子の知加道.com」を立ち上げた。
「2021年3月から念願のプライベートレッスンを始めることとなりました。20年のコロナ禍に、『オノマトペ(さまざまな状態や動きなどを音で表現した言葉のこと)』『ベアフット(裸足)理論』をゴルフに応用する理論に出合い、私の考えと合致しました」と、新機軸レッスンを展開する。
自分自身の成長を体感し、前へ進む元祖アイドルプロ。そんな姿も天性の愛くるしさに磨きをかけ、現代の女子プロゴルフ隆盛の礎に映る。=おわり
(構成=フリーライター・三上元泰)