本の森
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「女ともだち 靜代に捧ぐ」早川義夫著
1960年代末、ロックバンドのジャックスは独特のオーラをまとい、その後のロックシーンに大きな影響を与えたが、短い活動の後に解散。その後、中心メンバーの早川義夫が本屋さんになり、「ぼくは本屋のおやじさ…
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「目に見えない傷」レイチェル・ルイーズ・スナイダー著 庭田よう子訳
2017年、世界中で5万人の女性がパートナーまたは家族によって殺されている。アメリカでは毎月15人の女性が親密なパートナーによって“銃”で殺されている。こうした事実があるにもかかわらず、これまでDV…
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「白い病」カレル・チャペック著 阿部賢一訳
中国発の新しい病気で、優に500万人が亡くなり、1200万人が罹患(りかん)し、少なくともその3倍の数の人間が無症状のまま世界中を駆けずり回っている――現在のCOVID―19を彷彿(ほうふつ)させる…
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「明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語」田中ひかる著
菅新政権の看板政策のひとつに不妊治療の保険適用がある。少子化対策の一環として打ち出されたものだ。少子化が問題になって久しいが、昨年の合計特殊出生率は1・36で、戦後のベビーブームの1947年には4・…
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「心を病んだらいけないの? うつ病社会の処方箋」斎藤環・與那覇潤著
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、失業や業績悪化による経済的不安をはじめ、リモートワークや時差出勤から通常勤務に戻った際にうまく適応できないなど、さまざまな不安が蔓延(まんえん)している。多くは軽…
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「〈うた〉起源考」藤井貞和著
何事につけてもその起源を問うことは難しい。たとえば、本書の主題たる〈うた〉という言葉。有名なのは、本居宣長から平田篤胤、そして折口信夫が提唱した「うつたへ(訴え)」を語源とするもの。その他に「うちあ…
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「新敬語『マジヤバイっす』 社会言語学の視点から」中村桃子著
2014年、電子掲示板にある投稿があった。上司に「マジヤバイっすね」という言い方をすごく見下されて腹が立った。でも「っす」は丁寧語っすよね、と。それに対して圧倒的多数が「っす」は丁寧語ではないと投稿…
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「とうがらしの世界」松島憲一著
ここ数年は第4次激辛ブームといわれている。第1次は1984年に発売された「カラムーチョ」に端を発し、86年の新語・流行語大賞の新語部門で「激辛」が銀賞を受賞した。以後、それぞれのブームの特徴はあるが…
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「『バカ』の研究」ジャン=フランソワ・マルミオン編 田中裕子訳
最近流行の行動経済学は、旧来の人間は基本的に合理的な生き物であるという〈ホモ・エコノミクス〉理論に代わって、「人間は必ずしも最大の利益を求めるわけでも、常に合理的な行動をするわけではない」ことに注目…
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「歴史家と少女殺人事件 レティシアの物語」イヴァン・ジャブロンカ著 真野倫平訳
2011年1月、フランス南部のナント近郊に住む18歳のレティシア・ペレが誘拐・殺害され、数週間後、遺体はバラバラの状態で発見された。レティシアは幼い頃から家庭環境に恵まれず、双子の姉ジェシカと共に養…
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「見えない絶景 深海底巨大地形」藤岡換太郎著
昨年5月、人類が到達した最深点の記録が更新された。アメリカの海底探検家がそれまでより12メートル深い1万928メートル地点の潜行に成功したのだ。地上の最高峰エベレストがすっぽり入る計算だ。この地球最…
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「あいまいな会話はなぜ成立するのか」時本真吾著
夕食後の夫婦の会話。 妻「コーヒー飲む?」 夫「明日ね、出張で朝が早いんだ」 妻はコーヒーを飲むか否かを尋ねているのに、夫は飲む(イエス)とも飲まない(ノー)とも言っていない。それで…
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「病魔という悪の物語 チフスのメアリー」金森修著
緊急事態宣言が解除されてから2カ月余。再び新型コロナウイルスの全国的な感染拡大が懸念され、併せて無症候性キャリアーの増大が問題になっている。サイレントキャリアーが多くなれば、社会全体が疑心暗鬼に陥ら…
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「ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険」コーリー・スタンパー著 鴻巣友季子ほか訳
三浦しをんの「舟を編む」は辞書編纂に携わる人たちのちょっと奇矯な生態を描いているが、アメリカで最も歴史のある辞書出版社メリアム・ウェブスターの辞書編纂者であった本書の著者の「英語オタク」ぶりもなかな…
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「ステレオタイプの科学」クロード・スティール著 藤原朝子訳
今年5月、米国ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が黒人男性の首を圧迫して死亡させた。この背景には、「黒人だから――」というステレオタイプ思考があったことは確かだろう。相手の言い分を聞かずに一方的な思い…
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「人体は流転する」ギャヴィン・フランシス著 鎌田彷月訳 原井宏明監修
著者はスコットランドのエディンバラに診療所を構えて全科を診る総合診療医。診療所を訪れるさまざまな患者を長年診てきた著者はいう。「生きていることは、終わりのない身体変容のただなかにいることだ」と。受精…
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「ゲット・バック・ネイキッド」藤本国彦著
1970年の6月、ビートルズの最後のアルバム「レット・イット・ビー」が写真集付きのボックスセットとして発売され、高校生の身としては高価ではあったが思い切って購入。同じ年の夏には同名の映画も公開され勇…
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「エゴ・ドキュメントの歴史学」長谷川貴彦編
「エゴ・ドキュメント」とは一人称で書かれた資料を示す歴史用語で、手紙、日記、旅行記、回想録、自叙伝といった形態の史料が対象となる。公的な記録からではなく、語り手の視点から外側の世界を見ることでこれまで…
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「カラスは飼えるか」松原始著
「カラスは飼えるか」という問いは、①法律的にカラスを飼うことは許されるのか②実際に自分の家で飼うことが可能か、の2つがあるが、答えは「基本、飼えない」である。 日本では野鳥は基本的に飼ってはい…
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「博士の愛したジミな昆虫」金子修治・鈴木紀之・安田弘法編著
東京都が休業要請のステップ2に移行するに当たり「ウィズ・コロナ」宣言を発した。この言葉については賛否あるが、要はコロナとの「共生」を図ろうということだろう。現実の生物界においては、絶妙ともいえる工夫…