「女の子はどう生きるか」上野千鶴子著
1937年に吉野源三郎が書いた「君たちはどう生きるか」は近年マンガ化もされ、80年以上読み継がれているロングセラーだ。吉野の本を読んだ著者は、感動したものの「なんだか釈然としない気持ちが残った」という。なぜなら「そこで『君たち』と呼びかけられているのが、男の子ばかりだったから」だ。であるならば、「女の子はどう生きるべきか」という本が書かれなければならない。それが本書だ。
学校、家族、リア充(恋愛・仕事)、社会変革という全4章仕立てで、女の子たちが疑問に思っていることを上野先生に問いかけ、それに答えていくという形式。全44の質問の中から、いくつか例を挙げてみる。
共学校なのに、生徒会長はいつも男子しかなれないが、女の子は会長を目指してはいけないのか。浪人して東大を目指している姉にむかって、祖母は「もうお嫁に行けない」と愚痴をこぼす。どうして女の子が東大を目指したり、浪人してはだめなのか。彼氏に無理やりキスされた。相手の同意なくすることは暴力だと思うが、どうしたら分からせることができるか。他国では女性の政治家や大臣が輩出しているのになぜ日本では少ないのか、等々。
例えば東大に行くと嫁に行けないという考えには、東大男子は東大女子が苦手だという例を出す。なぜ苦手かといえば、自分と同じかそれ以上優秀かもしれない東大女子が相手では「オレサマ」になれないからだ。著者はそういう男性を「オッサン」と呼ぶ。これは中高年のオヤジのことではなく、「自己チューで、オレサマ度が高く、オンナコドモや立場の弱いひとを差別する、想像力がなくて鈍感力の高いひと」のことで、年齢性別は問わない。そして、こうしたオッサンが横行する社会を変えるのに必要なのが男女平等だ、と。女性に意思決定権があれば、女性の思いや経験が社会に反映されて社会を変えていくことができる。
小著だがここに示される生き方の指針は驚くほど豊穣。本書がロングセラーとして読み継がれていく未来に期待したい。 <狸>
(岩波書店 880円+税)