「楽隊のうさぎ」中沢けい原作者
――スクリーンで作品を見た感想は?
「私が書きたかったことを、ちゃんと撮ってくれてうれしかった。でも、映画はずるいよ! 小説では絶対に出せない音が出せるんだからって思っちゃいました。あと、思春期の子供を見守る周辺の大人たちの振る舞いですね。うかつに近づいたり、子どもの胸の中にズケズケと踏み込んだり、価値観を押し付けたりしない。たとえ相手が子どもでも他者なんだという距離の取り方をして、走路妨害をしないんです。ああ、日本映画もこういう繊細な表現をするようになったのかと、ちょっとびっくりしました。学校の主として、小説に書いたうさぎが擬人化して登場する場面といい、原作者が言うのは不遜かも知れませんが、何度見ても面白い。今度『学校のうさぎ』という小説を書こうかって思っちゃいましたよ」
――映画監督にも興味を持たれたのでは?
「そうですね。ものを書くことでいうと、ようやく楽しんで書けるようになりました。それに女も50代になると、外を出歩けるようになるんですね。同世代と飲み屋などでおしゃべりするんですけど、孫ができる年代なんだと思い、『動物園の王子』という小説でおばさん3人組を書かせてもらったんです。まあ日刊ゲンダイの読者の方々は少し遠く感じられるかもしれませんけど、会社にだって50代の女性がいますからね。もうお茶くみで寿退社という時代じゃない。たまには思春期や子育て時代を思い出したり、おばさんにも興味を持ってくださいねって言いたいです。グラビアのおねえちゃんだけじゃなくってね」