「ゼロ・グラビティ」アルフォンソン・キュアロン監督
――愛する者を失い心を閉ざす博士が、絶望の淵(ふち)で人生を取り戻したいと願うドラマも見事です。
「逆境は、再生の可能性をはらんでいるんですね。僕も長い間、クレージーな問題に悩まされてきましたが、自分や自分を取り巻く宇宙を考え直す機会だったと思うようにしています。もちろん痛みを伴いますが、自分がなり得る最高の姿を思い浮かべ、自分を強くしてくれる。サラリーマンの世界でもそうじゃないですか。新しいアイデアやビジネスモデルを考案する時は順境じゃなかったりする。そんな魂の再生を描きたかった」
――博士の瞳から涙がこぼれ、その粒が浮遊する場面は胸が詰まりました。
「どうもありがとう。あの場面は脚本の段階から書き込んでいた、とても力を入れたシーンなんです。涙は彼女から乖離(かいり)しても、彼女なんですね。地球と月が離れていても、同じ太陽系、銀河の中にいるように。大きな決断をする前の重要な場面、僕も大好きなシーンです」
――大きな作品を完成させ、アカデミー賞の呼び声も高いという気分は?