<第22回>拷問シーンで本当に痛がっている顔は必見
【ゴルゴ13 (1973年・東映)】
さいとう・たかを原作の劇画ゴルゴ13を実写映画にしたものだ。見る前は不安だった。
「ゴルゴ13は劇画だから面白いのではないか。それを実写にして、まして高倉健が主演するなんて……。それでいいのか」
そう思って見たのだが……。これが意外に面白かったのである。
奇妙な映画ではある。しかし、一見の価値はある。なんといっても、この映画はイランでオールロケを行っている。イランの首都テヘラン、第2の都市イスファハン、そして砂漠地帯。日本は一切出てこない。そのうえ、出演者は高倉健以外、すべてイラン人である。「よくまあ、こんな映画が実現したものだ」とため息が出た。
舞台はホメイニ師によるイスラム革命前のイランである。出演者たちは酒も飲むし、ナイトクラブで遊びもする。イランの美人(といっても男っぽい顔)は肌を見せてベッドシーンもやる。戒律の厳しい現在のイランでは考えられない映画だ。
高倉健は現場で相当、苦労しただろうが、画面では堂々としている。また、わたり合うイラン人男優、女優も堂々とした風格で演技している。堂々とした俳優たちが見えを切る、イラン版歌舞伎のような映画だ。