中村泰士さんの酒流儀 「カッコよく飲む」が「うまい酒」
日本レコード大賞受賞曲のちあきなおみの「喝采」、細川たかしの「北酒場」の他、数々の名曲を手掛けたヒットメーカー、中村泰士さん(76)。ダンディーな洋酒党で知られるが、酒もめっぽう強い。
酒の原点といえば、神戸・三宮、北野坂のオーセンティックバーだね。実家のある奈良の高校を中退してロカビリーバンドで歌ってた僕は、まだ19歳だったにもかかわらず飲み歩くのが大好きで、毎晩のように出かけてた。
当時はシェーカーでダイスを振る話し上手なバーテンダーが多かったし、カウンターでカードをしたりしていたから、ひとりで行っても楽しめる。お客を退屈させない話術もまた、バーテンダーの技量なんだよ。
飲んでたのはもっぱらブランデーなんだけど、“いかにカッコよく飲むか”っていうお酒のたしなみ方の基本をたくさん教えてもらったね。
僕が恵まれてたのは、歌手になるために1959年の夏ごろに上京してからも、知り合った年上の人たちに随分と可愛がられたこと。よく銀座や赤坂のバー、ホテルのラウンジに連れていってもらい、駆け出しの歌手じゃおいそれと手が出ない「ナポレオン」とかの高級ブランデーをごちそうになったね。