トム・クルーズが快演 「バリー・シール」の突き抜け度
ウソのようなホントの話、とはよくある映画の宣伝文句だが、これは確かにそうかもしれない。CIAはじめアメリカ政府機関や犯罪組織を片っ端から手玉に取った男の人生を描いた映画「バリー・シール/アメリカをはめた男」(21日公開)のことだ。
トム・クルーズ演じる主人公バリーは、民間航空会社のパイロットでありながらCIAにスカウトされ、紛争地の武装勢力に武器を輸送する任務を与えられる。ところがバリーはその立場を利用して麻薬王エスコバルらと交流を始め、やがて“帰りの便”で麻薬を米国内へ密輸するアルバイトを勝手に始める。
■レーガンやブッシュが全員実名で登場
作品の見どころを映画批評家の前田有一氏に聞いた。
「実話なので、70年代に国際社会を揺るがしたメデジンカルテルの大物はじめ、ノリエガらの独裁者、レーガン大統領や若きブッシュら政治家たち、会社や国名など全部実名で出てきます。そうした国々でCIAが民間機とパイロットを雇って暗躍していたとか、その“素人工作員”に出し抜かれて国内にコカインを蔓延させてしまったとか、ましてその男が年間約49億ドルも荒稼ぎしたとか、デタラメにもほどがあります。当時はCIAもDEA(麻薬取締局)の取り締まりもいい加減だし、良くも悪くもアメリカが一番ぶっ飛んでいた時代のパワーに圧倒されます」