「人が集まる、文化が集まる!まちの個性派映画館」美木麻穂著
「人が集まる、文化が集まる!まちの個性派映画館」美木麻穂著
映画が誕生してから130年。最盛期に7500館あった国内の映画館は、60年余りで10分の1以下にまで減少したが、一方で新たな映画館や上映場所も生まれている。
そうした新旧の映画館は、それぞれに異なる成り立ちや歴史を持ち、「映画を鑑賞すること」以外にも、多くの魅力を秘めている。本書は、そんな各地の魅力ある映画館を紹介するビジュアルガイドブック。
まずは古き良き時代の味わいがたまらないノスタルジックな映画館から。
福島県の本宮映画劇場は、1914年に芝居小屋として開館、47年に常設映画館となり現在の名前になった。映画館としての営業は63年に終了するが、建物と映写機材は守られ、今も不定期で上映が行われている。
同館をはじめ、兵庫県の豊岡劇場や長野相生座・ロキシーなど、創業から100年以上を経て、紆余曲折を経ながらも現役の映画館は、その存在自体が頼もしい。
ほかにも、インド仏教の聖地をモチーフにした「静岡シネ・ギャラリー」や六角形の天井が特徴的な京都「シネ・グルージャ」などの建物が「美しい映画館」、築90年の登録文化財を用いた東京で唯一の木造建築の劇場「シネマネコ」(青梅)などリノベーションで唯一無二の存在となった映画館まで、88もの映画館を写真とイラストで紹介。
中には、フィルム上映にこだわる岐阜の「ロイヤル劇場」や、成人指定の「バレ噺の会」など定期的に行う寄席も人気の青森「シネマディクト」、地元の映画好きが資金を集めて立ち上げ、今では映画製作にも取り組む「函館市民映画館シネマアイリス」など、枠に収まらない映画館も多数。
旅のついでに立ち寄るのも、映画館を目的に旅に出るのも良し。映画ファン必携の一冊。 (パイ インターナショナル2200円)