八千草薫から電話 「私のおならの音、分かりません?」
碓井 浅丘ルリ子さんが先生と一緒に仕事されたのは、「2丁目3番地」(71年、日本テレビ系)が最初だったんですね。当時、石坂浩二さんとの初共演が話題となりました。
倉本 当時のルリ子は小林旭のような力強い男のほうがタイプだったから、兵吉(石坂の本名)みたいにナヨナヨしたのは嫌だったんじゃないですか。でも、兵吉がルリ子に告白した時も僕はその場にいましてね、よく覚えているんですが。打ち上げの熱海の大野屋っていう旅館で兵吉は泣いちゃったんですよ。泣き口説きで「離れるのが寂しい」って。
僕はその脇にいて、森みっちゃん(光子)の上に馬乗りになって腰を揉んでましたよ。で、ルリちゃんが「兵ちゃんかわいそう~」って抱きしめたんですね。僕は知らんぷりして腰を揉んでいたっていう。
碓井 歴史的瞬間ですねえ。
倉本 家族みたいなものですね。役者の世界とライターの世界は違う。演出家と役者の関係は近くても、ライターと役者の間には距離がある。「2丁目3番地」の時は制作側の方からもお願いされてホン読みに参加したと思うんですけれど、ライターは基本、孤独の作業。現場にあんまり顔も出さないわけですが、俳優さんとは深く付き合うようにしていた。その人の性格を掴んでからじゃないと書かないっていうのを鉄則にしていたんですね。