俳優か正社員か…篠井英介が本気で揺らいだ“人生の岐路”
実は、何歳になってもアルバイトをしながら演劇を続けることってできるんです。
でも、ボクはそれでは嫌だと思った。もっとたくさんの人に見てもらいたい、そして俳優の仕事だけで食べられるようになりたい、履歴書やパスポートの職業欄に堂々と「俳優」と書きたいと思った。
思い切った決断でしたが、お芝居に関する情熱だけはあったし、きっと誰かが認めてくれるという自信があったと思います。
「花組芝居」の公演は小劇場でやっていたのですが、充実感があり観客の反応にも手応えがありました。写真週刊誌などのマスコミも「小劇場の玉三郎」なんて取り上げてくれて、それなりに注目もされていた。それが自信の根拠だったのかもしれません。
幸い、今はなき「アトリエ・ダンカン」という事務所に声をかけていただき船出することができました。「花組芝居」では歌舞伎のパロディーをやって女形を演じていたので、オカマさんの役のオファーも来ましたが、最初の10年ぐらいはお断りしました。現代演劇で女の役を、女優に交じって自然に演じられる俳優になるという志を持っていたので、一緒にされたくなかった。それを理解してくれた方がボクを使ってくれて、ここまで俳優を続けてこられました。
正社員のお話を頂いた時、正社員の道を選んでいたら、店も劇団も辞めるという選択をしなかったら、今はなかったでしょうね。誰にも相談はしませんでした。“どうしたいか”というのは自分に問うしかない。あの選択は間違いではなかったなと思っています。