脚本家ジェームス三木さん 旧満州時代の写真はたったの1枚
政府や時の権力者は国民に平気で嘘をつく
一族皆で引き揚げるのはリスクが大きいと判断して、それぞれの家族で帰国の途に就くことになりました。父母と幼い弟を抱えたウチは4人で汽車に乗り、朝鮮半島経由で南へ向かいました。でも、汽車といっても貨車にギュウギュウ詰め。中には屋根に上っていた避難民もいて、途中のカーブで振り落とされたり、トンネルで天井に頭を打ち付けて亡くなったり、悲劇はあちこちで起きました。
しかも、トイレなんてない。バケツを隅っこに置いて、遮蔽物もないまま男も女もそこで用を足す。恥ずかしいとかそんなこと言ってる場合じゃなかったんです。そして38度線を越え、ようやく着いた釜山で1週間ほど収容所に入れられ、引き揚げ船「大隅丸」で博多港へ。僕にとっては生まれて初めての日本ですが、うれしいよりも、とにかくホッとしましたねえ。
政府や時の権力者というのはね、平気で国民に嘘をつくんです。それは世界の国々を見たら一目瞭然です。だから、僕たちは言われるままに黙って暮らすんじゃなく、ちゃんと時の政府や政治をチェックして正しい方向へ引っ張っていかないとダメなわけです。