還暦すぎて25本…樹木希林さん映画関連“受賞数”にみる異才
樹木希林さんが亡くなって、ワイドショーのみならずバラエティー番組でも特集が組まれ、故人の功績やその生き方がクローズアップされている。いろんな役柄を映画やドラマで演じたが、映画でいえば半世紀にわたり100本以上に出演。この出演数はキャリアのある役者なら珍しくないが、すごいのはデータでは映画関連の受賞が25にも及ぶこと。
今までに出演したほとんどが脇役だから、「半落ち」「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」「歩いても 歩いても」など助演賞が多いが、それでもすごい。希林は脇で輝きながらも他の俳優(主役)や作品全体をよくする希有なタイプ。それが重宝がられた理由ではないか。
受賞が多い女優として同年代の吉永小百合を見ると、映画関連で20に届かないようだ。吉永を数字で上回っているだけでも驚きだが、吉永が60年代から2000年代までコンスタントに受賞しているのに対し、希林は2000年代から! もっとも古いのが05年、還暦をすぎてからである。
しかし、だからといって遅咲きではない。若い頃からドラマや郷ひろみとのデュエットでお茶の間を沸かせた人気者だったことはだれもが知るところ。スターの道を歩んできた吉永と還暦以降に評価された希林では受賞の意味合いが違うし、大変なことだ。なお、生前に出演した作品も今後公開になるので、受賞数はまだ伸びそう。
「主演をやりたいわけではなく、助演でいいの」とも語っていたという。8月には名脇役の菅井きんが92歳で亡くなった。タイプは異なるが、面白くて渋い脇役の女優が次々といなくなるのは映画界にとって損失だ。
(作家・松野大介)