追悼・無冠の帝王バート・レイノルズ…改めて敬意表したい
そして、ついに遭遇したのが鬼才R・アルドリッチ監督の傑作「ロンゲスト・ヤード」だ。アメフトの元プロ選手が八百長して引退し、金持ち女のヒモに成り下がったとこからこの痛快劇は始まる。一匹狼の役こそ彼の本領発揮だ。女から手切れ金代わりに巻き上げた車を暴走させ、バーで飲んでいたら2人組の警官に踏み込まれる何でもない場面だが、ここが最高だ。
口だけ生意気な背の低い方の警官に逮捕される寸前でも、彼は余裕で(きっとアドリブと思うが)言い放つ。「おまえよ、どうでもええけど、ちっちゃいな」って。吉本新喜劇の基本のようなツッコミで客席が手を叩いて笑ったのを覚えている。そして、アトランタ刑務所内での囚人チームVS看守チームの、彼の残りの懲役人生を懸けた試合運びも笑いと緊張の連打。アメリカ映画がこんなにベタで楽しいものとは知らなかった。その人懐っこい笑顔に娯楽映画のすべてが詰まっていた。故バートと故鬼才監督には改めて敬意を表したい。
このコンビはその後「ハッスル」で、孤独で哀れな刑事の人生の顛末も悲しさたっぷりに描いてみせた。お馴染みの、トラック野郎と州警察パトカーの大追跡ゲーム「トランザム7000」、金髪お嬢ファラ・フォーセットやサミー・デービスJrやジャッキー・チェンまでおふざけ登場する無許可大陸横断カーレースの「キャノンボール」という世紀のB級作でも漫才的快演をして、自身が映画を楽しんでいた。警察アクションの新境地「シャーキーズ・マシーン」は監督まで。脇役もこなす無頼派だった。我らは教えられた。「人生、ガッツで乗り越えようぜ」と。ご冥福を祈る。