肺がん公表した円楽 真の噺家だと思う理由と若き日の助言
しゃべりがシロートの僕にコツを惜しげもなく伝える。初心者マークで仕事中のあの頃の僕にはありがたかった。
また、正月のハワイで芸能人を待っている時に円楽が現れたことがあった。取材をお願いすると、「正月に噺家がハワイはマズいだろう」と断られた。それでも、しつこく食い下がっていると、僕のチームしかいないことを確認して話し始めた。僕の知人や業界でしか分からない話をして、僕だけが不覚にも爆笑。ところが、テレビでは使えない内容だった。
「ヘヘッ、面白かっただろ」と言い残して去っていった。
まるで僕のためだけのプチ独演会で、だから勘弁してくんなと言わんばかりだった。
もっと若い頃、彼は政府提供の税金の理解を深める番組に出ていた。その時、「脱税するなら今がチャンス。税金番組の司会者を摘発するわけにはいかないだろ。もっと稼ぎがあったら、大々的にやるんだが」と、毒を吐きながら笑わせた。若い頃から“腹黒”で笑わせるのが得意だった。
その一方で、若い頃に落語協会の分裂などの騒動を身をもって体験したからか、「あと10年、お役に立ちたい。東京の落語をひとつにまとめたい」と神妙なことを口にしたりもする。
年齢のなせる業か、まあ、今ごろは入院先の病室で看護師さんたちを相手に、そこでしか分からない小噺で爆笑を取っているに違いない。出てきた時の暴れっぷりが楽しみだ。