中村屋次男と名門・成駒屋長男 背負っているものが違う?
平成になって最も多く揚巻を演じてきた玉三郎は、今回は七之助の指導にまわり、さらに助六の母・満江の役で出た。この役は脇役の女形がやるもので、玉三郎のようなスターがやるものではないのに、あえて特別出演的に出たのだ。見せ場のない地味な役なのに、玉三郎がやると、その数分の間だけ、劇場全体が彼に支配される。何たる存在感。
助六は仁左衛門で、東京では1998年の自身の襲名披露公演以来20年ぶり。そして多分、これが最後だろう。当代一の二枚目役者である仁左衛門の助六は、團十郎・海老蔵父子とは別の魅力がある。「絵として、きまりすぎる」、完璧さの魅力で、海老蔵の破天荒さとは対極にある。
というわけで、今回の「助六」は、仁左衛門が見納めかもしれないだけでなく、玉三郎、七之助、児太郎という、過去・現在・未来の3人の揚巻役者が揃うという点でも、必見だ。
(作家・中川右介)