湯川れい子さん語る エルビスとのキスと結婚証明書サイン

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最初の渡米から7年目でようやく会えた

 私がエルビスを知ったのは20歳だった56年でした。駐留米軍が将兵向けに娯楽番組を提供していたラジオ放送局・FEN(極東放送網。現在AFN=米軍放送網)で聴きました。曲は「ハートブレイク・ホテル」。白人なのか黒人なのかわかりませんでしたが、セクシーなボーカルがとっても衝撃的でした。

 この年は「ハウンド・ドッグ」「ラブ・ミー・テンダー」と、出す曲出す曲、全部が大ヒット。そしてアメリカの雑誌で南部テネシー州メンフィスで育った甘いマスクの白人男性だと知りました。

 その頃の私は、まだ女優でした。音楽関係の仕事を始めたのはもう少し後、60年代に入ってから。最初はジャズの原稿でした。それから歌詞に興味を持っていたので一生懸命英語を学び、海外アーティストの新譜や動向を執筆するようになったのです。

 初めての海外取材は、海外旅行が自由化された64年。まだ1ドル=360円で1人当たり年1回、外貨持ち出し500ドルという規制がありました。そしてトニー・ベネット、コニー・フランシス、ナット・キング・コールといった人気歌手に会ったものの、エルビスに会うという一番の目的は達成できませんでした。それ以降、毎年渡米しましたが、エルビスに会うことができたのは71年。最初の渡米から7年も待たなければなりませんでした。

 そして73年の結婚証明書のサインとキス。本当に長年の夢がかなったひと時でした。でも、そのわずか4年後の77年8月16日、彼は自宅で突然亡くなったのです。当時42歳。生きていれば今年で83歳。あまりにも早い旅立ちでした。

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