(1)「娘さんが責任を持つなら手術しましょう。ただ…」
「認知症1(社会的な自立がまだ可能な初期段階の1ランク。5段階で評価)で、お父さまはひとり住まいですか? 懸念されるのは術後の点眼薬処方です。あなたが責任を持てますか?」
昨年の秋、東京都内に住む富岡裕子さん(仮名)は、父、孝一さん(仮名・77歳)を連れて都内の眼科専門クリニックを訪ねたとき、院長からこうクギを刺された。
目の中の水晶体(瞳)が濁り、物がかすんで見える、または見えにくいといった視力の低下があったり、まぶしく感じる症状も出るのが「白内障」で、認知症の孝一さんが手術を希望した。
中高年から多くなる白内障の手術(超音波水晶体乳化吸引術)は、痛みがほとんどない。しかも短時間で終わる、両目の手術でも、2週間ほどの間隔をおいて各15分程度。簡単な手術だ。
問題は術後の点眼である。眼帯を外した翌日から、抗菌点眼薬、炎症点眼薬(5分の間隔をおいて2種)、感染予防点眼薬など、術後1カ月間ほど3種類を目に注入する。しかも、抗菌点眼薬と炎症点眼薬は、朝、昼、夜、睡眠前の1日4回。感染予防点眼薬は朝、夜の2回である。