「東京裁判」4時間37分に凝縮された日本人全員の“十字架”
とはいえ、池上彰のような教科書的解説に終わらず、戦争犯罪は厳しく断罪する。南京事件で中国人が生き埋めにされる映像とともに、こうした虐殺を「日本軍隊の組織の中に根深く育まれた非人間性の表れであり、日本人が永遠に背負わねばならない十字架なのである」と断じる。兵士の暴走にとどまらず、日本人全員が自覚するべき罪悪というのだ。その通りだろう。
法廷では元陸軍少将の田中隆吉がかつての上官らの悪事を暴露。真珠湾攻撃が奇襲だったと主張する元外務大臣・東郷茂徳を嶋田繁太郎(元海軍大臣)が罵る。キーナン主席検事は天皇の責任問題をうやむやにするため東条を尋問するが、打ち合わせ不足なのか東条はトンチンカンな返答。逆に天皇を不利にしてしまう。笑える場面だ。
戦争は老人が決定して中年が指揮を執り、若者が殺される野蛮な行為。この法廷にずらりと並んだ爺さんどもの顔は、どれもこれも薄汚い。
(森田健司)