朴槿恵が危険視…階級闘争を暴力的に風刺した問題作

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 カーティスは先頭車両を目指しつつ支配階級の優雅な暮らしを目にする。天窓の明るい車両には果実が実り、女たちは着飾って髪にパーマをかけ、若者はパーティーに興じる。全身があかまみれのカーティスらとは雲泥の差だ。

 見どころは支配階級の子供たちの授業。美人教師の下、幼子が列車を統御するウィルフォード(エド・ハリス)を身ぶり手ぶりで褒めたたえる。まるで独裁者を崇拝する臣民。ウィルフォードが統治権を総攬(そうらん)する神聖な元首であるという教えを宗教的に叩き込まれているとも解釈できる。一種の幼児洗脳だ。

 この映画の思想性を朴槿恵は危険視した。彼女の父は軍事独裁で民主化運動を弾圧した朴正煕だ。その娘を韓国国民は大統領に選び、1973年の金大中事件以来、韓国を注視してきた日本人は岡目八目の違和感を覚えた。その揚げ句が朴槿恵の逮捕であり、ブラックリストだったとは……。

 桐生悠々ではないが「だから言ったでないか」と嘆きたくなるのだ。

 (森田健司/日刊ゲンダイ)

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