「ヒトラー~最期の12日間~」妄想と怒声…独裁者の末路
だが幹部たちは最後までヒトラーへの忠誠を口にし、彼の妄想を信じようとする。
見どころはゲッベルスの妻マクダがわが子6人を殺す場面。あどけない女の子たちが眠らされ、口に毒のカプセルを入れられて息絶える。マクダはヒトラーの前で号泣し「逃げてください」と懇願。彼女が結婚を願うほどヒトラーに心酔していたことは有名だ。日本とドイツ。独裁国家には宗教的崇敬が存在した。
敗戦が濃厚なドイツでは自殺が相次いだ。歴史学者リチャード・ベッセルはこう記している。
「戦争が終盤に入った頃に、ナチは(ゲッベルスも含め)自殺を称賛するようになっていた。すべてが破壊されたことによる無気力と絶望感から、数万人のドイツ人が自らの命を絶つに至った」(「ナチスの戦争」中公新書)
本作でも軍人は次々とピストル自殺を遂げる。45年4月にソ連軍が侵攻したとき、ベルリンとウィーンなどで数十万人のドイツ人女性がレイプされたという。戦争は狂気だ。
(森田健司/日刊ゲンダイ)