<1>麻雀で始まり競輪場で終わった18年の付き合い
阿佐田哲也さんと初めて会ったのは、麻雀卓を挟んでだった。エンターテインメントとして、令和の今も高い支持を受けている「麻雀放浪記」を、週刊大衆に連載中だった。
大きな体を傾け、ぼそっと言った。
「阿佐田です。妙なことになっちまって」
彼に付き添ってきた週刊大衆の編集者が、
「先生は純文学志向で、本名の色川武大で中央公論の新人賞をいただいてます」
と、言葉を添えた。
人生に意外性はつきものである。肩の力を抜いて書いた麻雀小説がヒットした。週刊誌の部数が伸び、編集部は明るい。狙った路線でなくても、こうなれば執筆を続けなくてはならない。
照れる気持ちもあって「妙なこと」と、阿佐田さんは言ったのである。
先輩作家で、ベストセラー「小説 兜町」で世に出た清水一行さんと阿佐田さんが初めて会うことになり、料亭の一室に麻雀卓が用意してあった。清水さんも雀豪で、「麻雀放浪記」の作者との手合わせを望んだからだ。