<1>麻雀で始まり競輪場で終わった18年の付き合い
「板さん、ぼくは博打ぐらいロマンチックなものは、ないと思っているんだよ」
と、同意を求められた話を紹介した。ギャンブルとは、危険という虚妄に、身をやつした、夢。私もまったく同意見だと返した。
さて、このシリーズでは、18年間の付き合いだった阿佐田哲也さんを座標軸に、ギャンブルエッセーを書きたい。
それにしても……、今も立ち上がる思いがある。麻雀卓を挟んで初対面。競輪場のスタンドで手を振ったのが永訣。海外のカジノで肩を並べての奮闘もあった。こんな人間関係は、一体、何だったのか。
阿佐田哲也語録の中で「人生は8勝7敗でいい」という言葉が知られている。大相撲でも1年間、8勝7敗なら、幕尻から小結になれる。
同時に阿佐田さんは、よき敗者(グッドルーザー)であれと、主張したかったと私は思う。人生ゲームでは勝者を目指すのは当然だが、負けに沈むのも味わい深い。このあたりから、次回、話を続けよう。