<4>記憶に残る負けがある「麻雀名人戦」第2期の美しい牌譜
何ともややこしい報道ぶり。麻雀の阿佐田哲也のイメージが浸透していたとわかる。
私が書いておきたいのは、阿佐田哲也さんは雀豪ではなく、常勝の打ち手でもなかったということ。無論、弱かったと言うつもりはない。勝ち負けのラチ外にいて、自分の麻雀を打ち続けたと言うべきか。
強面の勝敗にこだわる打ち手ではなく、長手数で丁寧に手役を育てる麻雀だった。
徹夜麻雀も、よく付き合ったが、彼に大敗したという記憶はない。
だが、何事にも例外はある。青森競輪場で特別競輪が開催された。私は5日目の準決勝に合わせて青森入りした。来賓席に顔を出すと阿佐田さんと、後に直木賞作家になる若き日の伊集院静さんがいた。2人とも早くに青森入りしたのか、疲れた表情。その夜は、ねぶた祭りの囃が聞こえる雀荘で闘牌した。
物書き3人と、競輪新聞社の社長がメンバーだった。スタートして私は目を剥いた。
「どうしたんですか? 阿佐田さん」