映画賞はNO眼中?「今日から俺は!!劇場版」白々しさが潔い
映画を見終わって場内の照明が明るくなるや、「面白い」という声が背後から聞こえた。30代くらいの男性だ。この面白いは「笑えた」ということだろう。ただ実のところ、この面白いという言葉が本作にとっては曲者だ。映画全体を通して「面白い」ということはないからだ。
笑いが確かにある一方で、笑いがどうにも弾けず、白々しい空気感(昔は「しらけ鳥が飛んで行く」といった)が漂うシーンも少なくない。笑いを意図したシーンが、ときどき目もあてられないほど白々しくなる。いわゆる、外しっぱなしというわけだ。
普通なら笑いの演出が下手とみなされ、致命傷といえるだろう。だが、本作はそうならない。「銀魂」などで知られる福田雄一監督の作風が、あえて、外しにかかっているとも考えられるからだ。監督は分かって、しらけ鳥を飛ばしている。
たとえば、橋本環奈が途端に“ぶりっ子”(死語か)をするシーンでは彼女が話し終わるや、ある人物が「くだらないものを見せつけやがって」と言い放つ。それは、観客こそが言いたいことだ。監督の盟友である佐藤二朗の登場シーンでは、確信犯的な外しの連続が不気味でもある。佐藤独特のもにゃもにゃした言い回しで、効果音を真似た言葉を喋る場面など笑えるはずがないのに、延々撮り続ける。