旧ジャニ会見から1年半、STARTO社の再興成否…CD売上と人権意識から考察、ファンは一体何を望む?
創業者問題発覚から1年半、SE社は再興できている?
2023年9月および10月、旧ジャニーズ事務所は創業者問題で2度記者会見を開いた。その後、同社所属タレントのテレビ・CMの露出は大幅に減少。2024年4月からは、同社所属タレントのマネジメント業務を、新会社STARTO ENTERTAINMENT(以下、SE社)が引き継いだ。
記者会見から約1年半、SE社は事務所を再興できているのだろうか。本稿では、記者会見前後から現在に至るまでにおいて、所属グループのCDシングル売上の推移と、その背景にある人権意識について振り返りたい。
2022年「オリコン年間ランキング」TOP10のうち6作品が旧ジャニ
まず、記者会見前の2022年「オリコン年間ランキング」シングル部門では、旧事務所から6作がトップ10入りしていた。内訳は、King & Prince(以下、キンプリ)が1位と9位、Snow Manが2位と3位、なにわ男子が7位と10位でそれぞれ2作だった。
キンプリは、現Number_iの平野紫耀(28)ら3人の脱退発表があり、ファンのCD購入運動によるブーストもあったが、いずれにしても人気の高さを証明した。2020年のデビュー以来、毎シングル100万枚前後の売上を継続してきたSnow Manの強さは相変わらずで、前年デビューしたなにわ男子も勢いを継続していた。
2023年のトップ10入りは7作品
次に、創業者問題がくすぶりはじめ、2度の記者会見を挟んだ2023年の年間シングルランキングでは、旧事務所から7作がトップ10入りした。内訳は、キンプリが1位と6位、Snow Manが2位と3位、SixTONESが8位と10位でそれぞれ2作、なにわ男子が7位で1作だった。年間7作をトップ10に送り込んだのは、事務所の歴史を通じて、2009年、2020年以来3回目と、極めて高い数字だ。
2022年のキンプリ脱退騒動時のように、2023年の創業者問題により“推しメン”や“推しグループ”存続自体に危機感を持ったファンが、テレビ・CM露出減に対抗し、CD購入で彼らを後押しした。もちろん、前年もトップ10入りしていた3組と、前年から売上を伸ばしたSixTONESなど、グループそのものの強さが大前提にある。
2024年トップ10入りは4作品
SE社となり再スタートを切った2024年の年間シングルランキングでは、同社から4作がトップ10入りした。内訳は、Snow Manが1位と2位で2作、Aぇ! groupが4位で1作、SixTONESが10位で1作だった。トップ10入り4作は、2020年代で最も少ない数字となった。
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SE社ー強体制が崩れ、相次ぐ熱愛報道も痛手に…
SE社がトップ10入りを3作落とした代わりに、日韓合弁会社のLAPONEエンタテインメントが、INIの2作、JO1の1作と過去最多の計3作を送り込んだ。トップ20まで見ると、K-POPボーイズグループも2組ランクインしている。
2023年の旧事務所記者会見以降、それまで競合と見られていた他社ボーイズグループの露出が増えた。旧事務所から続いたー強体制が崩れ、自由競争の結果、相対的にSE社のトップ10作品が減った。
ただ、2024年のSE社としての再スタート以降、所属タレントのテレビ・CM出演は、徐々に2023年記者会見以前のように取り戻されつつある。その中で売上を落とした原因は、他社ボーイズグループの台頭とはまた別のところにもある。
記者会見のあった2023年下半期以降、それまで年間トップ10入りしていたキンプリ、なにわ男子、SixTONESに熱愛報道が相次いだ。いずれのグループも熱愛報道以降、トップ10入りできる水準のシングルを出せていない。
タレントファーストの優良事務所…その“副作用”は?
記者会見以降、事務所のメディア報道に対する力が弱くなっていることもあるが、特にSE社になってからは、所属タレントの恋愛、そして結婚について寛容になったことが大きく影響している。
かつての熱愛報道には、事務所が否定したり黙殺するケースが多かったが、今ではメンバー本人が肯定的なコメントを出したり、認める発言をすることもある。
さらに結婚へのハードルも低くなり、2024年の結婚数は計6人で、過去最多となった。この流れは今年に入っても変わっていない。
結婚・恋愛については本人の意思に大きく委ねられていると見られ、SE社として高い人権意識の表れでもあるだろう。その点では、タレントファーストの優良事務所になったとも言えそうだ。
ただし、それがファンにとっても良い事務所とは限らない。メンバーの結婚・恋愛の自由度の高さに失望し、ファンをやめてしまう人も多い。その結果は、CDシングル売上減という形で、如実に表れてしまう。
このタレントの人権重視の姿勢は、他社ボーイズグループとの競合以上に事務所再興への壁ともなるが、“変わる”必要がある事務所にとっては、このまま押し進めるべきなのだろう。
SE社の救世主的存在のSnow Man
そんな中でもSnow Manは、SE社の救世主的存在だろう。デビュー以来、創業者問題に関わらずミリオンヒットを連発し、オリコン調べのアーティスト総売上は右肩上がりで毎年1~2位を記録。今年リリースのベストアルバムも初の150万枚超えを果たしている。目黒蓮(28)を筆頭にメンバー個々の活動も活発で、冠番組「それSnow Manにやらせて下さい」(TBS系)も若年層に大人気。まさに覇権グループと呼べるだろう。
また、一部メンバーの熱愛報道でシングル売上を落としたSixTONESだが、松村北斗(29)は俳優業が絶好調であり、グループとしても初のゴールデン冠番組「Golden SixTONES」(日本テレビ系)が4月からスタートしている。大人気を博した「行列のできる相談所」の後継番組でもあり、成功すればあらためての大ブレイクもあるだろう。
timelesz、ジュニア再編に“期待の目”
新メンバー募集オーディションで社会現象となり、破竹の勢いのtimelesz(旧Sexy Zone)、人気ジュニアグループ再編を経ての次期デビュー候補であるACEes、KEY TO LIT、B&ZAIと、これからまだまだ伸びが期待できる要素も多い。
一方でそのジュニア再編は、一部メンバーやファンの気持ちに添ったものでは無かったとも言われている。また今年3月のKAT-TUN解散も、メンバーの意に反して、事務所主導で決まったのではないかと憶測を呼んでいる。
SE社が真の意味で再興を果たしたと言えるのは、人権意識と売上が両立できた時だろう。その日が来るまでSE社は、人権については信念を貫きつつ、グループのあり方などについてはファンの声も汲み上げ進んで欲しい。
(こじらぶ/ライター)