新型コロナと関係なく世の中自体がおかしくなっている
歴史を振り返って考える文化や表現も少なくなった。映画作りに携わる若者でも、昔の作家の映画を見ようともしない。元からタイトルも知らないし興味もいかないらしい。出会った新米助監督に、「ジョン・フォード監督の『捜索者』知らんのかいな? 見ろって」と言うと、横から古株の制作部くんに「そんなイジメてやらないで下さい。パワハラになりますよ」と言われて、思わず噴き出してしまった。名作を教えてあげたのに、本人は「バカにされて精神的被害を受けた」と世間に言いふらすというわけだ。今、先輩スタッフが若造に「おい、うまい弁当買ってこい」と言うだけでパワハラらしい。映画界にもハリウッド発の「#Me Too」運動のあおりで、とんでもない新ルールが独り歩きし始めている。現場で、監督もうかつに俳優たちを怒鳴ると訴えられるという。
コロナと関係なく世の中自体がおかしくなっている。大島渚や若松孝二が現役なら、この閉塞した社会空気にこそ、怒鳴り散らしてることだろう。オレも仕事がやりにくくなった。あほらしやの鐘が鳴るというやつだ。