著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<14>写真展ならどこでもできる 街の中でやりゃいいんだよ

公開日: 更新日:

 電通を辞めて2年ぐらい経った頃かな、東松照明さん(写真家)が寺子屋方式の「ワークショップ写真学校」を始めたときに、森山(大道)さんや深瀬(昌久)さんと一緒にオレを先生として呼んでくれたんだよ。東松さんはオレが電通に勤めていたときから目をつけてくれて、かわいがってくれた。写真学校は、授業とか時間割りとかじゃなくて、「森山教室」とか「荒木教室」とか、それぞれの写真家ごとにやってたんだ。(1974年、東松照明の呼びかけに応じて、森山大道、細江英公、深瀬昌久、横須賀功光とともに「ワークショップ写真学校」の設立に参加。写真学校の教授となる。荒木教室は、酒を飲みながらの撮影・講評会、合宿、銀座キッチンラーメンでの写真展、ダンススタジオでの舞踏訓練、写真集の刊行など幅広い活動を行った)

 写真学校は2年続いて、ワークショップをやめてしまうのが残念だったから、オレはもう1年やることにしたんだよ(「荒木経惟私塾」)。

マイクロバスを借りて東京の街を走りながら撮る

 で、やったのが「東京を行く」。その頃、ワークショップに集まる若い連中は写真展もなかなかできないじゃない。でも、どこでもできるぞーって、街の中でやりゃいいんだよって。いろいろやったね。電話ボックスが写真展の会場だって言って、電話ボックスを探しながら撮った写真を、そこに置いてある電話帳に貼った“公衆電話ボックス展”。電話帳をめくると写真が出てきて、見たら電話してくださいと電話番号も書いてさ。かかってこなかったけどね(笑)。山手線では、駅のプラットフォームで、次の電車が来るまでの間に「写真を撮って、電車が来たら乗る、次の駅で降りてまた撮る」を繰り返して1周する。それをプリントして、次の日曜日に新宿駅のベンチで電車を待ってる人に見せるんだよ。

撮った写真をトランクに入れて「写真売ります」なんて

 マイクロバスを借りて、東京の街を走りながら、窓から撮ったりしてね。撮った写真をトランクに入れて、原宿で売ったんだ。キャビネ1枚100円で売ったけど、1、2枚しか売れなかったね。これは両脇の子分たちが悪いんだよ~。許可なしで路上で売ってんだもの。こんな、タバコ吸ってたら寄ってこないよなぁ(笑)。「男はつらいよ」の寅さんの影響もあったんじゃないかな。東京の街を撮った写真をトランクに入れて、「写真売ります」なんてやってた。「トランクの中の東京」ってね。「よりどり見どり」だって、ワハハハ。

 東松さんは、オレのことをかわいがってくれてね。沖縄でワークショップをやったときも、亀甲墓でのヌード撮影なんかも自由にやらせてくれたんだ。東松さんが亡くなったとき(2012年、享年82歳)のインタビューでも話したけど、今思うと、「ワークショップ写真学校」の先生として呼ばれたオレらの先生、親分が東松さんだったんだ。東松さんは、自分の後継者でなくて、「写真」の後継者をつくるという大きな功績を残したんだ。

(構成=内田真由美)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  2. 2

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  3. 3

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  4. 4

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  5. 5

    中居正広の騒動拡大で木村拓哉ファンから聞こえるホンネ…「キムタクと他の4人、大きな差が付いたねぇ」などの声相次ぐ

  1. 6

    木村拓哉は《SMAPで一番まとも》中居正広の大炎上と年末年始特番での好印象で評価逆転

  2. 7

    中居正広9000万円女性トラブル“上納疑惑”否定できず…視聴者を置き去りにするフジテレビの大罪

  3. 8

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭

  4. 9

    中居正広が払った“法外示談金”9000万円の内訳は?…民放聞き取り調査で降板、打ち切りが濃厚に

  5. 10

    中居謝罪も“アテンド疑惑”フジテレビに苦情殺到…「会見すべき」視聴者の声に同社の回答は?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭