<9>電通で特別待遇 毎日スケッチブックの写真集を作ってた
電通にいたのは10年ぐらいかなぁ(1963年入社、1972年退社)。最初はアシスタントだったけど、徐々に冷蔵庫とかの商品写真や銀行やなんかの広告写真もやったね。三和銀行の岩下志麻の等身大の写真も撮ったなあ。
仕事でモノ撮ったりしてて3年ぐらい経つと、頼まれて撮るものとかって、おもしろくないんだよね。会社とか人様の広告より、自分のことのほうがおもしろいことに気がついたんだよ。その自分のことっていうことが「私」っていうことに、「仕事」じゃなくて「私事」っていうことにつながっていくんだ。
だって、人の宣伝するより、たいしたものじゃないけど、自分のことをやったほうがおもしろいじゃない。時流じゃなくて、自流だね。それで、自分で撮った写真のプリントをスケッチブックに貼り込んだ写真集を作り始めたんだ。
銀座に月光荘という画材屋があってさ、そこのオヤジと仲良くなって、このスケッチブックにしようってね。B4の大きさで、日にちと、撮ったカメラとレンズも書いてたね。ミノルタSRとかね。オレは第1回太陽賞の受賞者だからさ、電通では特別待遇だったんだ(笑)。で、仕事してなかったから、毎日、スケッチブックの写真集を作ってたんだよ。タイトルつけて、レイアウトもやって、プリント貼り付けて。オレ、デザイナーの才能もあるしね(笑)。