飯野矢住代誕生秘話<8>大学生の恋人の存在も隠さず 事務所も「姫」も公認
こういった記事が、結果として事務所も店も公認の恋人に昇華させたのは容易に察しがつく。矢住代を事務所にスカウトしたメリー喜多川も、「姫」のマダムの山口洋子も「まあ、矢住代はこういう子だから……」と早々に諦めたとしても不思議はない。
ただし、引っ掛かる点もある。丸尾長顕が恋人のSを指して「学生で、いい家庭の育ち」とコメントしていることである。「S君は留学経験のある御曹司」といった記述もある。いくら飯野矢住代が、女優やモデルとして活躍し、「姫」で高給を稼いでいても、相手が御曹司なら貢ぐ理由がないはずだ。ではなぜ、矢住代はマダムの山口洋子に給料の前借りを繰り返していたのか。
実はこの頃、矢住代はすでに「S君」とは別れていた。別れた理由については、当時の矢住代自身のコメントで明かしたい。
「背が高くて、やさしくて、すてきな人よ。(中略)でも、やさしいのがかえってアダになって人生の強さにいまひとつ欠けているのかもね。――これは今だから言えることで、別れた当時は、なぜこんなにいい人から自分の心がほかの男にうつったのかわからなかったわ」(「平凡パンチ」1969年4月7日号)