<86>ドン・ファンには虚言癖が…「後妻の子供でいじめられた」とウソも
「きょうだい皆、同じ母親です。幸助はそうやって他人の同情を引こうとしていたのかなあ。虚言癖もあったし、話を盛ることも得意だったから。仲の悪いきょうだいもいたけれど、暮れには高級おせち料理を送ってくれていたし、一般的な普通の付き合いですよ」
お兄さんが苦笑した。
「私も『オレは後妻の子供だ』って、幸助さんが小学生だった頃から聞いていました。それがウソ? 驚いたわ」
後日、ドン・ファンと70年もの付き合いがあるという小学校時代からの幼馴染みの女性と会った際にこの件を話すと、彼女はそう言って目を丸くした。
「そうだったんですか。ボクも振り回されましたね。妹のHさんとは何度かお会いしていますし、お姉さんのYさんとも都内で会いました」
「Hちゃんに幸助さんが亡くなったのを伝えてくれたんでしょ。お世話になりましたってHちゃんが言っていたわ」
お兄さんの奥さんが頭を下げた。
「奥さんはどこにおるの?」
「警察に携帯電話を取りにいっていますので、ボクが一人で留守番しているんです」
しばらく話をして2人は戻っていったが、早貴被告と大下さんは、なかなか戻ってこなかった。