<86>ドン・ファンには虚言癖が…「後妻の子供でいじめられた」とウソも
「携帯電話を返してくれるというから、早貴ちゃんと一緒に警察に行ってくるね」
野崎幸助さんの遺体が自宅に帰ってきてから1時間ほどすると、家政婦の大下さんが言った。
「うん? 遺体には誰かが付いていなければいけないからね。早めに帰ってくださいね」
「分かりました。では、行ってきます」
早貴被告と大下さんは笑顔で一緒に車で出かけていった。
「いいかな?」
リビングに一人でいるとインターホンが鳴らされて、声がした。このインターホンからは外の様子が分かるし、録画ができる機能も付いている。
玄関に招き入れたのは市内の中心部で酒店を経営しているドン・ファンの兄夫妻であった。ドン・ファンよりも一回り大きな体で、兄弟だけあって似ているが、しゃべり方はおとなしく知的な感じもする方だ。
お兄さんは足が少々、不自由なために私が手を取って、リビングに連れていった。