<95>野崎幸助さん周辺の複雑な人間関係 目先の金を考えてバラバラになり始めた
一方でマコやんはニュートラルで、誰とも等間隔に距離を置いていたが、ひげのMのことは嫌っている。門外漢の私はニュートラルな立場になるのが当たり前だが、やはり腹黒いひげのMのことは嫌いだった。
「それにしてもアプリコはどうなりますか?」
「それなんや。なんとしても継続させたいんやけど、佐山さんは潰すのに賛成やからなあ。皆、目先の金を取ろうと考えてるんやろな」
「困ったものですね」
「そうや。佐山さんは退職金を500万円は取ろうと考えてるらしいで。きっと、それを手にするまでは辞めへんと思うけれどな」
主人を失った会社の存続は混沌としていた。
翌日の5月30日は、まるで社長の死を惜しむかのような大雨が、午前11時に始まる葬儀の直前から降りだしていた。そんな雨のなか、この日も葬儀場の門の外には20人ほどの記者が傘を手に立っていた。
通夜もそうだったが、葬儀も淡々としたもので、早貴被告に対しての文句が参列者から出たこともなかった。
式が終わって斎場に残ったのは遺族と従業員、そして私だった。通夜の後に私に絡んできたひげのMや元従業員のSは飛行機の都合があるとかで姿を消していた。 =つづく