<95>野崎幸助さん周辺の複雑な人間関係 目先の金を考えてバラバラになり始めた
「ほうか。そんなことを言い腐ったのか、あの野郎が」
斎場に泊まるための手回り品が必要になった早貴被告と家政婦の大下さんを野崎幸助さんの家まで送り、再び一緒に戻ってきた番頭格のマコやんを誘って居酒屋に行き、Mとの顛末を話した。
「あいつ早貴を籠絡してアプリコを乗っ取る気なんやで」
「へえ、そうなんですか」
「だから手なずけようとしてるって早貴から聞いたよ。彼女はそんな気はさらさらないって言ってたけどな。いまごろ斎場の宿泊場で、大下さんも交えて口説いているのとちゃうか? 大下さんとMは昔から仲がいいから」
「でも佐山さんはMのことを蛇蝎のごとく嫌っていましたよ」
「そりゃあそうや。社長にべったりのゴマすり男やからなあ」
金庫番の佐山さんは会計士のMさんとは仲が良く早貴被告とは仲が悪かったが、大下さんは早貴被告に引っ付いた。大下さんは、ひげのMとは古い仲だ。