「娘が小学生の時、作文に『昨日、うちに白鳥さんが遊びに来ました』と…」
兄弟子の家の風呂に入って鼻歌とは、さすが木久蔵、屈託がない。
2000年に師匠の山陽が没する。享年91、大往生であった。多くの女流講談師を育てた、名伯楽であった。
「師匠は落語芸術協会に所属していて、寄席に出てました。姉弟子たちも所属してたので、入れるかなと思ったら、今後は色物も前座修業をしなければ会員になれないと言われてあきらめました。その時、春風亭小朝師匠が、『落語協会に来ればいい』と誘ってくださって、師匠の身内扱いで入会できました。現在寄席に出られるのは小朝師匠のおかげです。ただ、寄席ではあまり新作は望まれません。寄席の流れをこわさないためには、古典のほうが無難なんです」 =つづく
(聞き手・吉川潮)