「新作講談を勧めてくれた円丈師匠は私にとって救いの神でした」
茜の出世作といわれる新作講談、「幸せの黄色い旗」は、経験談を基にしたものだ。
「講談に出てくる名所旧跡を巡るバスツアーの車内で、講談を読む仕事をよくやってました。必ず若いバスガイドさんが乗っていたんです。もし、おばさんのガイドさんがいたらと想像して作りました。主人公がガイドをやめて、通学路で学童を誘導する緑のおばさんになると、『初々しいねえ』と言われる結末なんですが、このネタは今でもよくやっています。緑のおばさんが70代になって、介護士の資格を取って介護バスの案内をしてるという設定です(笑)」
女流講談師の新作は、若い講談ファンと新作落語ファンに受け入れられた。
「でも、年配の講談師や講談ファンの間では、『茜がグレちゃった』という噂が流れました。新作をやると『グレた』と言われるなんておかしいですよね。そんなことは気にせず、円丈師匠が主宰する会に出て、落語に近い新作ばかりやって、よく受けました。勧めてくれた円丈師匠は私にとっては救いの神でした」
茜の新作に登場する女性は、ユーモラスであるが、そこはかとないペーソスが漂う。