【追悼】“ゴッドファーザーの名優”ジェームズ・カーン 自分のことが分かっている役者だった
その2年後、コルレオーネ家のソニー役で再会した。父親のヴィトーが襲撃されてニューヨークで抗争が続き、ソニーは自分の可愛い妹が夫からいつも暴力を振るわれてるのが我慢ならず、家を飛び出して行った挙げ句、ハイウエーの料金所で敵の殺し屋たちに待ち伏せされて、機関銃でハチの巣にされてしまう。あの残酷なシーンは忘れることはないだろう。彼は車の左ハンドル席で何発も食らってもんどり打ちながら、右側ドアをこじ開けて車外に身を放り出してもなお、連射を浴びて大の字で死に果てたのだ。あのリアリズムさえ超えた演技こそ映画だった。
三男マイケル役に挙げられていたが、アル・パチーノに譲ったと聞いた。自分のことが分かっている役者だった。続けて、「シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛」では優しい心の海軍兵をしみじみと演じて好評を博した。そして、「フリービーとビーン/大乱戦」も忘れがたい。ソニー兄貴がとぼけた刑事役も軽くやってのけるとは意外だった。オールスターキャスト戦争大作「遠すぎた橋」では勇敢で一本気な軍曹役を見事にこなしていた。「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー」じゃ孤独な金庫破りを完璧に演じ、ガンさばきも完璧な腕前だった。もう一作、偲んでみたかったのはコッポラ監督と再び組んだ「友よ、風に抱かれて」というアーリントン墓地で戦死者を埋葬する兵隊の話だ。ベトナム戦争を憂う老曹長役は人間らしく頼もしかった。
老兵がまた一人去った。勇気をありがとう。ジェームズ・カーン、ドイツ系ユダヤ人。享年82。