今年の暫定No.1邦画は「渇水」主演の生田斗真はジャニーズの宝である。だが…
日本共産党の志位和夫委員長が「アベノミクスの株高で一番儲けたのは、ユニクロ柳井会長一家」とツイートしたのは2013年5月。そのきっかり10年後の先月、柳井家の次男・柳井康治氏が初プロデュースしたヴィム・ヴェンダース監督作品がカンヌ映画祭で披露され、主演の役所広司が男優賞に輝いた。
いつの時代も映画製作にはパトロネージュが機能することを痛感させる出来事ではあったが、ユニクロマネーでヴェンダースに撮らせた映画を邦画と呼ぶことにぼくはいささかの躊躇がある。いま「邦画」の定義は危うい。
さて、『渇水』である。今年の暫定ナンバーワン邦画と断言しよう。監督は髙橋正弥。その名を聞いてピンとくる人はそうそういないはず。というのも、1967年生まれの髙橋は「助監督のベテラン」として重宝されてきた人物なのだ。相米慎二、森田芳光といった鬼籍に入った名匠から、根岸吉太郎、宮藤官九郎のような現役のビッグネームまで、髙橋がチーフ助監督を務めた作品は少なくない。
映画は、猛暑続きのある夏の話。群馬県高崎市の水道局員・岩切の業務は、滞納家庭を訪ねては水道を止めて回る「停水執行」。県内全域で給水制限が発令される中、岩切は父親が蒸発し母親も出て行った家に残された幼い姉妹と出会い、葛藤しながらも規則に従って停水を執行する。